まずは,第1章からです。

科学的根拠で示す 学習意欲を高める12の方法

第1章では,「学習意欲の考え方・調べ方」について説明されています。

最初,に学習意欲を次のように定義づけています。
『学習意欲は,「自分から進んで学習しようとする気持ち」』p.12

この定義に従うと,「学習意欲」は「気持ち」なのですから,情緒的なものということになります。
果たしてそうでしょうか。

もちろん,子どもの内面の問題と捉えられるので,心情的なもの,情意的なものと定義づけられるのでしょう。しかし,最近の考え方では,内面で起こることと行動などで表現することとは密接に関連していると言われています。ですから,単に内面的な気持ちや心情で止まるのではなく,その気持ちや心情の表現としての行動も含めていいのではないかと思います。

つまり,「学習意欲は,自分から進んで学習しようとする気持ちとその行為」と定義した方がいいように思います。みなさんどうでしょうか。

次に,驚くべきことが記されています。
それは,
 『学習意欲という言葉は,心理学では明確に定義されておらず,学習の動機づけとして扱われています。』p.12
です。特に,『心理学では明確に定義されておらず』というところが,驚きです。心理学では,「意欲」を「動機づけ」として研究されているから,特に学習に限った意欲というのは,明確に定義されていないのでしょう。

そこで,氏は, 
『心理学的にみると,学習意欲とは「学習動機を選択し,それを実現しようとする心の働き」です。』p.13
と,心理学からの学習意欲を定義づけようとします。

ここでも,やはり,「心の動き」なのです。心理学ですから当然といえば当然でしょう。ただ,これも上述のような最近の考え方からは,「行為」や「ふるまい」を加えた方がいいと思います。

心理学できちんと定義づけられていないのに,学校現場では,「学習意欲を高める」や「意欲を持って取り組む」「意欲的に授業に参加する」のような言説をよく用います。いい例は,学校の研究テーマです。「意欲」を「やる気」と置き換えれば,実に多くの使用が認められるのではないでしょうか。

このことは,学校現場では,子どもたちの「やる気」や「意欲」が学習に重要だと理解していることを意味しています。学問的に明確な定義がなくても,現場感覚として,実感していることなのです。

また,平成元年の指導要領改訂も強く影響しています。なぜなら,この改訂で,「生きる力」が提唱され,そのために「関心・意欲・態度」が重視されるようになったからです。そして,それは,子どもたちの学習評価にも反映され,各教科の観点別評価の第一項目に「関心・意欲・態度」が設けられることになったのです。

いずれにせよ,現場では,「学習意欲」や「やる気」が重要であることは理解しているが,それをきちんと明確化するには至っていないといえます。ですから,まずは,その定義づけと,構成要素,要素の関連を整理しなければならないでしょう。

実際,氏も,次の項目で,「学習意欲の構成要素」を整理してまとめています。
次回は,それを紹介して,考えてみたいと思います。

 
ランキングに挑戦しています