(1)情動のコントロールに必要なこと  

情動のコントロールのために必要な段階が次の四段階である。いずれも子ども自身の立場である。
 ①自分の感情を知る。
 ②自分の感情を受容する。
 ③感情の原因を知る。
 ④別の方法を考える。  

しかし,これらの方法を子どもたちが,きちんと理解しているかというとそうではないだろう。子どもの発達段階において,それぞれ自力でできるとは思えない。したがって,教師や大人は,これらの方法を支援することが必要となる。  

その際に重要になるのは,どのような言葉がけをするかである。言葉を介してのみ,大人と子どもが信頼関係を築いたり,子どもに感情を理解させたりすることができるからである。  

では,それぞれの段階でどのような言葉がけをすればいいのか。そのことは,なかなか明らかにされていない。そこで,一つずつ具体的な言葉がけを中心に説明していきたい。 


(2)自分の感情を知る  

小学生の子どもたちは,自分の感情を理解していないことが多い。理解していないから,それに振り回されて,泣いたり拗ねたりする。そして,一度泣いたり拗ねたりすると,その感情をコントロールできずに,パニック状態に陥ってしまう。  

そんな時,まずは,静かに見守ることが重要である。子どもたちは,自分の感情もわからず,それに取り憑かれているのである。そんな子どもに対して,
「いつまで泣いているの」
「泣いたって(拗ねたって),何にもならないでしょ」
のような言葉がけは,何の役にも立たない。逆に,子どもの感情を逆撫でして,パニック状態を長引かせてしまう。  

というのも,人間の感情は,10分から20分で治るのである。したがって,その時間をそっとしておけば,とりあえず,パニックは治るのである。それなのに,下手な声かけをして,子どもの感情をリセットし,余計に長い時間パニックを継続させてしまう。  

では,どのような言葉がけをすればいいのであろう。  

それは,上のような否定的な言葉がけではなく,共感的な言葉がけである。当て推量でもいいので,子どもの感情を言語化して返すようにする。例えば,

「今,腹が立っているんだよね」
「悲しい気分なんだよね」

のようにである。  

もし,それが子どもの実感と異なっているときは,子ども自身が,そうでないと首を振ったり言語化したりしてくれる。その上で,子どもの感情に共感すればいい。  

このとき注意したいのが,共感した後の言葉がけである。教師や大人は,子どもをその感情から脱出させようと,説教じみたことを言いがちである。例えば,こうである。

「確かに,腹が立っているんだよね。でもね,…」
「悲しいんだよね。でもね,そうやっていても仕方ないでしょ」

 子どもたちは,共感されてもその後「でもね」で否定されると,共感されたとは思わない。むしろ,感情を否定されたと思う。したがって,「でもね」ではない言葉で続けなければならない。それは,

「確かに,腹が立っているんだよね。だから,どうする?」
「悲しいんだよね。それで,どうすればいいと思う?」

のように「だから」や「それで」にしたほうがいいのである。  

このような共感する言葉がけの他に,パニック状態を短時間で解決させる言葉がけがある。ある意味,魔法の言葉だ。それは,次の通りである。

まずは,共感しておいて,
「答えなくていいから考えて。今そうしていることがどんな自分のためになる?」
である。「自分のため」が理解できない学年であれば,「自分のとくに」に置き換えてもいいだろう。

また,次のような方法も有効である。
 ・パニックの感情に共感する
 ・そのパニックの行動とその反対の行動の利点と不利点を説明する
 ・パニックの行動と反対の行動とどちらかを選択させる



 
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