今週の金曜日,他校で授業をさせていただきます。
5年生の詩教材「紙風船(東京書籍)」です。
その単元計画を考え,指導案を作成しました。その授業づくりのところを紹介したいと思います。

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 3.授業づくりについて

 詩は,物語などと同様の文学的な作品であるが,物語とは異なる点が多い。語り手は物語と同様にいるものの,一人称であったり三人称であったり,ときには人称が明確でないこともある。したがって,視点も曖昧であることも少なくない。また,反復や対比,比喩などのレトリックが豊富である。テキスト全てが比喩的であり,寓意的なこともある。

 このような詩教材を読み取らせるときに,語り手や視点,レトリックから作者の意図に迫ろうという方法がある。しかし,この方法は作家論的であり,一つの詩からそれに迫ることは難しい。それよりは,読者論的に,読み手がどのように解釈して読み取るかということの方が有効である。それは,「読者行為論」などでも紹介されているし,イーザーの批評理論などにも見られる。つまり,語り手,視点,レトリックなどを読者が読むという行為において,自分なりに解釈し読み取っていくことが重要なのである。

 そこには,読み手という明確な主体が必要であり,主観的でもいいから自分なりに解釈するということが必要となる。その動機となるのが,読者のその詩に対する愛好度である。この愛好度を学習に活かすために,三つの詩の中からお気に入りを決め,その理由を追求することで,読解を進めていくことを構想した。

 さらに,お気に入りの理由をその詩の良さとして捉え,それを音読表現に結びつけることで,子どもたちの学習意欲をより高めることができると考えた。そこで,単元主題を「一人語り」と設定し,読解して明確化したそれぞれの詩の良さを伝える活動を単元の出口(パフォーマンス)とした。そして,その主題に到達するために,次のような活動テーマを設定した。それは,「お気に入りを決めよう−お気に入りの良さをはっきりさせよう−良さを音読で伝えよう」である。

 単元の導入である「お気に入りを決めよう」では,教科書に提示してある三つの詩を読み,それぞれの大体を理解したところで,一番いいと思う詩を一つ選ばせる。そして,その理由をノートに書かせ,「自分なりの読み」が形成できるようにする。

 それに続く活動では,「お気に入りの良さをはっきりさせよう」では,前次の「自分なりの読み」を,それぞれの詩ごとに交流し,良さを明確化していく。このとき,子どもたちは語り手や視点,レトリックなどに着目しつつ,それぞれの良さをイメージ化していく。もちろん,独りよがりな良さや誤読による良さは淘汰されていく。このように,良さを明確化することで,「自分なりの読み」は「自分たちの読み」へと深まっていく。また,ここで学習したレトリックは,それらをきちんとラベル化して子どもたちに意味を理解させ,今後の文学的な作品を読むときのイメージ化の道具として活用できるようにする。

 単元のまとめとなる「良さを音読で伝えよう」では,これまで学習してきたことをテキストに書き込ませ,シナリオのようにして練習し,音読で発表できるようにする。そこには,「自分なり」では気づかなかった「自分たち」の読みも付加され,より豊かな音読ができる。そして,それを参観日に保護者に向けて発表する場を設定し,「一人語り」が完成する。子どもたちが,この「一人語り」を楽しみ,保護者や他の子どもなど,より多くの他者に評価されることで,読解や表現の楽しみを理解することを期待する。

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