教育実践研究所「EduPrac」服部英雄のブログ

授業研究、生徒指導、学級経営、子育てなど教育実践全般についてのブログです。

教材分析

国語3年生東京書籍「サーカスのライオン」教材分析3

「出来事わけ」「主題分析」の次は、「視点分析」です。
「視点」には、西郷文芸理論の、「視点人物」と「対象人物」があります。
また、井関義久の分析批評理論の、「人称」と客観かどうかを組み合わせたものもあります。

両者について検討していきます。
まず、「視点人物」では、ライオンの「じんざ」となります。じんざから見た男の子、火事の様子などが描かれています。ただ、じんざが火の中に飛び込んでいく場面では、じんざを外から見ていて対象人物化しいます。これは、そのように描くことで、場面の様子やじんざの行動を生き生きと描き、男の子との関係を描写することに寄与しています。

次に、分析批評理論ですが、それで検討すると、「三人称限定視点」と言えます。
これは、「じんざ」という客体に限定して心情などを描写しているということを意味しています。 
そうすることで、主題により迫る効果が生じます。なぜならじんざの言動で、男の子との関係が生じ、男の子を救おうとする勇気や心情が描かれるからです。

ただ、最後の段落、第48段落は余計です。この段落があることで、「全視点」とも読めてしまうからです。「全視点」というのは、登場人物全員の心情にまで入り込んでいる視点なのです。この段落がない方が、作品全体に余韻が残ったと思います。

この後、登場人物分析と、レトリック分析を行います。
それは、また、次回以降に記したいと思います。 
 

 
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国語3年生東京書籍「サーカスのライオン」教材分析2

題名分析の次は、「出来事わけ」です。
一般的な場面わけに近いのですが、学習場面とは関係なく、出来事にわけていきます。

その時の目安は、「時、人、場所」です。
これらが変わるところが、出来事の分かれ目なのです。

それに基づいて、本教材を出来事わけすると次の通りです。
丸数字は、形式段落です。

①②  サーカスがやってきた
③〜⑥ サーカスのじんざ
⑦〜⑨ 夜に散歩に誘われるじんざ
⑩〜⑮ 男の子との出会い
⑯〜⑳ 留守宅の男の子と過ごすじんざ
㉑〜㉕ 男の子の訪問を喜ぶじんざ
㉖〜㉛ 火事の方へすっ飛んでいくじんざ
㉜〜㊺ 男の子を助けて、犠牲になるじんざ
㊻〜㊽ じんざのいないサーカス

上述のように、この出来事ごとに学習をするわけではありません。学習場面は、学習にかけられる時間数をもとに、いくつかの出来事を合わせていきます。

しかし、物語の主題を分析するときには、この出来事わけが必要となります。
これらの出来事に共通しているモチーフを見出し、そこから主題であるテーマを分析するのです。

このモチーフとテーマの区別が、主題分析では重要です。
前者は、誰が読んでも共通理解できることです。そして、そこから個人がそれぞれ理解することが後者なのです。

では、モチーフは何でしょう。
「ライオンのじんざと男の子の絆」
と考えられます。つまり、じんざと男の子のつながりや心の通い合いなのです。

そこから何を読み取るか、それがテーマです。
これは、個人によって異なって構いません。
例えば、「自己犠牲」でもいいでしょう。また、「真の友情」でもいいでしょう。ここには、正解がありません。しかし、読者がそれぞれに妥当だと考えるテーマはいくつか存在するのです。

今回、更なる分析のために、「自己犠牲」をテーマに設定したいと思います。
それをもとに、各表現が、そのテーマを表現するのに適切かどうかを検討していくのです。
  
 
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国語3年生東京書籍「サーカスのライオン」教材分析

1 題名分析

「サーカスのライオン」という題名です。
ここに、中心人物の「じんざ」の名前は出てきません。

あえて、「ライオン」という一般名を使用しています。
ここでは、「じんざ」という名前を使ってもよかったはずです。

例えば、「ごんぎつね」は、「ごん」という中心人物の名前を題名に持ってきています。
この教材では、そうではないのです。

ここにどんな意味があるのでしょうか。 
それを検討するのが、題名分析です。

そこで、考えてみましょう。
「サーカスのじんざ」ではどうでしょう。

これでは、「じんざ」が誰なのか、題名から想像できません。
また、直接的すぎて、題名としては今一です。

では、「ライオンのじんざ」はどうでしょう。
これは、先の題名より理解の範疇が狭まります。

ただ、そのライオンがじんざであることは理解できますが、じんざがどのような状況にあるのか、ということが全くわかりません。

「サーカスのライオン」とすることで、その状況が理解できるのと、ではそのライオンがどのような出来事に遭遇するのかという期待を持つことができます。

つまり、題名を状況や人物を一般化することで、読者を引きつけているのです。

以上のような思考法で、題名を分析していきます。
この時の思考法が、「比較」と「仮定」です。

「もし、〜だったら」のように仮定し、それを原文と比較します。
そうしながら、思考を深めていくのです。
 
 

 
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6年生国語「大切な人と深くつながるために」教材分析

これも新しい教材です。
筆者は、 鴻上尚史氏です。

まずは、題名分析からです。
「大切な人」とは誰でしょうか。親友、恋人、家族などが考えられます。小学校6年生ですから、親友や家族でしょうね。

「深くつながる」とは、浅く繋がることではないことがわかります。浅く繋がるのではないということは、より親密になるということ、絆を結ぶことなどが考えられます。

そして、「ために」とあることから、大切な人とつながることが目的で、そうなるための方法が書かれていることが予想されます。 

次に、形式段落のまとめです。全部で7段落あります。

1 誰かとぶつかるときに、コミュニケーションが必要となる
2 コミュニケーションが得意とは、衝突したときになんとか追っていける能力があるということ
3 お互い少し不満だけど何とかやっていけるというのがコミュニケーションが得意ということ
4 コミュニケーションの技術が上達すれば、大切な人とつながることができる
5 何度もぶつかり合うことがコミュニケーション上達につながる
6 昔と違ってコミュニケーションが苦手になって来ている
7 コミュニケーションを上達させ、大切な人と深くつながろうという呼びかけ

以上のことから、要旨をまとめます。
「コミュニケーションが得意ということとそうなるための方法」 

次に、レトリック分析です。前回と同じように構成のレトリックからです。
この作品の構造ですが、「はじめー中ーおわり」という構造ではないように読み取れます。

まず、最初の話題提示が、1段落です。それを受けて、2・3・4でコミュニケーションが得意ということや上達することについて説明されています。

そして、5段落で転じて、コミュニケーションが得意になるための方法が説明されています。最後に6段落では現代のコミュニケーションの問題点を挙げ、7段落で提言をしています。

この構成は、「起・承・転・結」だと言えます。といっても、それにきちんと当てはまるとも言いづらい構成です。というのは、論が問いかけて答え、また問いかけて答えというように論点が次々と変転していくからです。

意味のレトリックでは、コミュニケーションの練習をスポーツの練習にたとえているのが大きなレトリックと言えるでしょう。あとは、問いかけや呼びかけなど読者を惹きつけるレトリックが多用されています。

人と衝突することをうまくやっていくことがコミュニケーションには大切である。そのように上達するには、直接的な人との衝突を経験しなければならない。というのが、この作品の主張なのです。そして、それを伝えるために音声言語的にまとめたのがこの作品であると言えるでしょう。

 
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6年生国語「メディアと人間社会」教材分析

新しい教材です。
筆者は、池上彰氏です。

まずは、題名分析です。
「メディアと人間社会」という題名ですが、陳腐な感を否めません。
メディアや、情報化社会という言葉が一般化されたのは、今から30年以上前です。
ですから、古い、陳腐という感じがするのでしょう。

つまり、この「メディアと人間社会」という問題設定自体が、古臭いのです。
もっといい題名がなかったのかと思います。というのも、今の情報化と、30年前の情報化は異なっているはずだからです。その間には、高度情報化という言葉も一般化していました。

今の時代に合う言葉としては、ネット社会とか、ネットワークによる情報伝達とかではないでしょうか。もちろん、SNSなども現代的です。

次に、各段落の要点です。それらは、次のようにまとめることができます。

1 情報伝達の欲求からメディアによる情報化社会を作ってきた
2 古くは、文字を使って情報を伝達してきた
3 電波による情報伝達は、早さと共に社会的影響を与えてきた
4 映像による情報伝達は、その情報量の多さから社会に対する影響もより大きくなった
5 インターネットで情報の発信が可能となったが、中には社会を混乱させる情報もある
6 人間の欲求を意識してメディアとつきあうことの大切さ

これらをまとめて要旨を考えます。メディアの歴史と人間社会の関係、そこからこれからのメディアとの付き合い方が意見されています。もっと短くまとめると、「人間の情報伝達の欲求とメディアの関係」となります。

そして、レトリック分析です。
構造のレトリックから考えてみます。

1段落で話題提示をして、2から5段落でその話題についての説明をしています。そして、6段落でまとめて自分の考えを述べています。ですから、1段落が「はじめ」、2から5段落が「中」、6段落が「おわり」となります。

典型的な「はじめー中ーおわり」の構成です。
そして、「中」では、歴史的な順序に合わせて説明を展開しています。これは「順序立てて」説明していることになります。

また、「中」の説明の仕方は、段落の最初に「文字」「ラジオ」「映像」「インターネット」ということを紹介して、それを説明していくという方法をとっています。ですから、最初の一文を読めば、何のことについて説明しようとしているかがわかります。

次に、意味のレトリックの分析なのですが、あまりありません。強調の文末表現や接続詞の工夫ぐらいです。比喩や反復、対比などはほとんどありません。ということは、自分の考えをできるだけストレートに伝えようとしていることがわかります。

以上が、この教材の分析となります。  

 
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