「教育実践を語る」服部英雄のブログ

授業のこと,学級経営のこと,家庭教育のことなど,教育全般にかかわることについて,これまでの経験や研究をもとに語っていきたいと思います。

学習意欲

学習意欲について考える6

第4章です。ここでは,知的好奇心について述べられています。
 
科学的根拠で示す 学習意欲を高める12の方法


まず,知的好奇心を次のように定義します。
 『知識や理解など知的なことについて、その珍しいことや変わったことを見たり聞いたり調べたりしたがる気持ち』p.38

好奇心の中でも,知識や理解に限定した「知的好奇心」を定義づけていると言えます。しかし,学習意欲の構成要素を考察した時にも書いたように,知的であろうとなかろうと,好奇心は学習意欲の構成要素となります。

やはり,教育や学習,勉強ということに筆者の意識の重点があったのでしょうか。
あるいは,学校教育だからこそ「知的」に限定したのでしょうか。

次に, 知的好奇心は,人間が生まれてから成長を続けるものだということについて,各成長段階についてまとめています。それが,次のようなものです。

① 感覚運動的探索[乳幼児期]
② 質問期[幼児期]…2,3歳から始まり,6歳で頂点に
③ 探索・探求[児童期]…言語,思考,身体活動による 年長時から児童期
 年長時〜中学年…探索・探求が盛ん。自分の周囲の人にまで質問。図書などで調べるように
 高学年…物事の真相、価値を求めて探求
④ 探索・探求[青年期]…特に抽象的・科学的思考を中心とする pp.38-39

これらは,単にこのような成長,段階があるという紹介だけで,それらが所与のものとしてあるのか,そうでないのかや,何の基準によって次の段階に至るのかということなどが明記されていません。実は,これらの方が重要だと思うのですが。

そして,好奇心に関係がある動機づけとして,心理学の立場から,
 ・好奇動機(バーライン,1957)変わったもの、珍しいものを求める動機
  ① 不調和
  ② 複雑性
  ③ 意外性   
・認知動機…知識の探求とか思考とかを引き起こす動機
  ① 発見の喜び(ブルーナー,1960)
  ② 概念的葛藤(バーライン,1057)
  ③ 認知的不一致(ハント,1965)
  ④ 認知的不協和(フェスティンガー,1957)   
・感性動機…感覚的刺激を求めて、さらに刺激の変化を求めて行動を引き起こす(ベクストン,1954)
・活動動機・操作動機
などを挙げています。

以上のことを受けて,最後に,指導法について紹介しています。「モンテッソリー法」「発見法」「不セレーンストーミング」などを各論者を紹介しつつまとめています。

これらは出どころがはっきりしていていいのですが,ただ,発表された年度が古すぎます。
1950年代から1980年代が具体的な舞台なのです。ですから,内容的には,かなり古いのです。

確かに古いものにも学ぶことは沢山あります。「不易と流行」の「不易」の部分です。しかし,そればかり珍重していては,「流行」の部分がおろそかになります。ですから,バランスが重要なのです。

知的好奇心を高めるために,どのような指導・支援をしていくのかということが,なんとなくわかるようになってきました。



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学習意欲について考える5

第3章です。

科学的根拠で示す 学習意欲を高める12の方法

第3章は,「興味」についてまとめてあります。

まず「興味」を次のように定義します。
『それは,「おもしろくて,心が惹きつけられること」を意味します。』p.33
そして,子どもが興味を持っている様子について次の3点を示しています。

『① その対象に近づき、積極的態度を示す。
 ② 興味の対象となっているものから愉快な感情が得られる。
 ③ その対象あるいはそれに関係した活動を持続して行う。』p.33

この定義と特徴を見ても,やはり本能的なもののように思います。
ただ,社会的構築主義では,本能的なものも社会的に構築されるという視点に立つので,「本能的」の本来的意味とは少し違います。

ですから,生まれつきのものという「本能的」ではなく,地域性や歴史性,つまり今ここにいるという社会性において発揮されるものが,「興味」なのです。

そのように考えることで,従来は「本能」というと育んだり高めたりすることはできないものも,教育によって高めることができるわけです。氏は,そのことを踏まえてかどうかはわかりませんが,「興味を育て高めるポイントについて列挙されています。

 『興味を育て高めるには,次の点を考えることが大事です。
 ① 快の経験をさせる−まず条件づけ,さらに般化へ 学習においては,あらゆる機会に,その成功あるいは努力を認め,子どもに快の経験、成功感を体験させ,自己効力感,有能感を味わわせることが大事になります。P.34
 ② 知識を与える−最初はわかりやすく教える
 ③ 技能を伸ばす
 ④ 能力に応じた課題を与える
 ⑤ 積極的態度をもたせる
 ⑥ 教師がよい影響を与える
 ⑦ 親のしつけを考える』pp.34-37

これらは,どれも重要であることは容易に理解できます。
ただ,これらが相互にどのような関係にあるのか,ということについては述べられていません。
それぞれが独立しているとも考えにくいので,これらの関連性について考えることが必要だと思います。

そして,以上の論から,「興味」が「好奇心」と密接に関連していることもわかります。
また,「愉快」や「快」の感情との関連がうかがえるということは,情動との関連についても考察しなければならないでしょう。

以前の検討で,「意志力」との関連で情動をあげましたが,どうやら「好奇心」も情動との関連が強いことが明らかとなりました。ですから,以前まとめた「学習意欲」の構成要素である,「欲求」「好奇心」「意志力」「自己効力感・有能感」すべてと情動が関連してくることになります。

一体,どのように関連してくるのでしょうか。
「情動」も「学習意欲」の構成要素に入れるのが良いでしょう。そして,「情動」と他の構成要素が相互作用するような関係と考えるのがいいと思います。その相互作用には,「増幅」「縮小」「派生」などが考えられます。

ただ,まだまだ研究しなければならない課題ですね。

 
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改めて「学習意欲」について考える2

 まずは,第1章からです。

科学的根拠で示す 学習意欲を高める12の方法

第1章では,「学習意欲の考え方・調べ方」について説明されています。

最初,に学習意欲を次のように定義づけています。
『学習意欲は,「自分から進んで学習しようとする気持ち」』p.12

この定義に従うと,「学習意欲」は「気持ち」なのですから,情緒的なものということになります。
果たしてそうでしょうか。

もちろん,子どもの内面の問題と捉えられるので,心情的なもの,情意的なものと定義づけられるのでしょう。しかし,最近の考え方では,内面で起こることと行動などで表現することとは密接に関連していると言われています。ですから,単に内面的な気持ちや心情で止まるのではなく,その気持ちや心情の表現としての行動も含めていいのではないかと思います。

つまり,「学習意欲は,自分から進んで学習しようとする気持ちとその行為」と定義した方がいいように思います。みなさんどうでしょうか。

次に,驚くべきことが記されています。
それは,
 『学習意欲という言葉は,心理学では明確に定義されておらず,学習の動機づけとして扱われています。』p.12
です。特に,『心理学では明確に定義されておらず』というところが,驚きです。心理学では,「意欲」を「動機づけ」として研究されているから,特に学習に限った意欲というのは,明確に定義されていないのでしょう。

そこで,氏は, 
『心理学的にみると,学習意欲とは「学習動機を選択し,それを実現しようとする心の働き」です。』p.13
と,心理学からの学習意欲を定義づけようとします。

ここでも,やはり,「心の動き」なのです。心理学ですから当然といえば当然でしょう。ただ,これも上述のような最近の考え方からは,「行為」や「ふるまい」を加えた方がいいと思います。

心理学できちんと定義づけられていないのに,学校現場では,「学習意欲を高める」や「意欲を持って取り組む」「意欲的に授業に参加する」のような言説をよく用います。いい例は,学校の研究テーマです。「意欲」を「やる気」と置き換えれば,実に多くの使用が認められるのではないでしょうか。

このことは,学校現場では,子どもたちの「やる気」や「意欲」が学習に重要だと理解していることを意味しています。学問的に明確な定義がなくても,現場感覚として,実感していることなのです。

また,平成元年の指導要領改訂も強く影響しています。なぜなら,この改訂で,「生きる力」が提唱され,そのために「関心・意欲・態度」が重視されるようになったからです。そして,それは,子どもたちの学習評価にも反映され,各教科の観点別評価の第一項目に「関心・意欲・態度」が設けられることになったのです。

いずれにせよ,現場では,「学習意欲」や「やる気」が重要であることは理解しているが,それをきちんと明確化するには至っていないといえます。ですから,まずは,その定義づけと,構成要素,要素の関連を整理しなければならないでしょう。

実際,氏も,次の項目で,「学習意欲の構成要素」を整理してまとめています。
次回は,それを紹介して,考えてみたいと思います。

 
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改めて「学習意欲」について考える

この夏,改めて学習意欲について考えてみたいと思います。
このブログをご覧になっている方も,一緒に考えてみてください。
また,ご覧になった方は,職場や仲間で議論してみてください。

なぜ,この夏,改めて学習意欲について考えてみようと思ったかというと,次のようなことからです。

「学習意欲が大事だとはわかっているが,どのようにすれば意欲がわいたりそれを高めたりしていいのか,わからない先生が少なくないのではないか」
「とりあえず,その学年の学習内容を習得させなければならない,という意識が強すぎるのではないか」
「学習意欲云々より,教科書を進めることに意識が向き過ぎているのではないか」 

一つ目は,若い先生が増えている現場では,切実な問題だと思います。
「わからないから,どうしようもない」ということです。
また,そうやってわからないまま過ごしている間に,年月は経ってしまいます。その結果,二つ目,三つ目の問題に陥ってしまいます。

ですから,二つ目,三つ目は,ベテランの先生でも陥りがちな問題なのです。
このような先生は,とにかく,プリントやドリルを多用して,子どもたちにきちんと習得させようとします。

習得させることを否定するものではありません。重要なことです。しかし,それが子どもの学習意欲を下げていることにつながってしまっていることもあるのです。結果的に習得した,だけでなくどのように習得したかということが,学習意欲には重要だと考えています。

習得したという結果に重きを置く人の学習意欲に対する考え方の一つが,「わからないことがわかるようになる,できないことができるようになるのが,意欲につながる」です。上述のように,結果はもちろん大切なのですが,その結果に至るまでの過程が学習意欲にとって重要なのです。

習得させること,結果を出すこと,これらはもちろん大切なことですが,そうすることで学習意欲が低くなるのでは,何をやっているのかわかりません。

以上のようなことを踏まえて,以前にも紹介した文献 

科学的根拠で示す 学習意欲を高める12の方法

を紹介,検討しながら,学習意欲について考えていきたいと思います。 


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子どもの学力を向上させる

子どもの学力を向上させることが,学校教育の重要な目的の一つです。
このことに異論のある学校教育関係者はいないと思います。

しかし,重要なのは,その方法です。
同じ目標を掲げても,その取り組み方や具体的な方法が違うことというのは,少なくないのです。
そして,その方法が,実は,子どもの学力を向上させることを妨げていることもあるのです。

例えば,家庭学習の量を増やしていく方法。毎日,漢字,計算を宿題とし,それにプリントや問題集まで課するようなやり方です。

確かに,量を増やすことで,少ない量よりは,学力は向上するように思えます。
しかし,この方法の裏にある,教師や大人の考え方は,
「子どもたちには,宿題を課さないと,しかも量を保障しないと,自分からは学習しない」
です。つまり,子どもたちの自ら進んで学習することや,意欲的に学習に取り組むことに対して,懐疑的なのです。

ただ,このやり方では,子どもたちは,課せられたもの,つまり与えられたものをこなすので精一杯となってしまいます。しかも,学習嫌いの子ども,学習に対して苦手意識を持っている子どもなどは,このような宿題をするのに膨大な時間がかかってしまいます。その結果,学習嫌い,苦手意識をより増長させてしまうことになりかねないのです。

子どもの学力を向上させるのに大切なことは,次の3点だと考えています。
それは,
・子どもの学習意欲
・思考や思考法の重視
・学校の授業の充実

子どもの学習意欲は,これまでにもその重要性について,このブログに書き記してきました。
上述のような家庭学習では,子どもの学習意欲は高くなりません。
学習意欲が低い状態で宿題に取り組むのと,学習意欲が高い状態で家庭学習に取り組むのでは,同じ量の学習をしても,身につく力に差が生じることは,容易に理解できるのではないかと思います。

思考や,思考法の重視というのは,以前「基礎・基本」が重視され,各教科の知識や理解の指導が常用だと考えられていました。その考え方は,今も続いているように思います。この考え方で極論すれば,それは,「知識」や「技能」の教え込み,注入となってしまいます。

実は,「知識」や「技能」は,思考すること,表現することを通してこそ,真に身につくのです。そして,そのようにして身についたことは,忘れにくいのです。また,思考法を子どもたちが獲得すれば,その方法を用いて,日々の経験や学習に対して多様な学び方をするようになります。

最後に,授業の充実ですが,これは,意欲と思考法が生きる授業を創造することです。
そのための指導の工夫をすることです。しかも,一人一人の子どもに対してです。
つまり,クラス全員の子どもたちの学習意欲と,思考を重視する授業を目指さないといけないのです。

さらに,意欲と思考の重視は,家庭学習にも当てはまります。単にドリルをしたり,練習をしたりする家庭学習ではなく,じっくりと考えたり,やる気が出るような家庭学習を工夫しなければならないのです。

このような意識を学校関係者がもつこと,あるいはたゆまぬ工夫をすること,それが子どもたちの学力を向上させるのです。

 
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